人権教育推進基本方針

学校法人天理大学
2003年4月1日

 私たちは、世界一れつきょうだいと教えられている。すなわち、差別のないろくぢの世界こそが陽気ぐらし世界の要諦の一つであり、その実現を目指すことを教えとして受けている。また、国連においては今世紀を「人権の世紀」とするために、「人権教育のための国連10年」* が制定されるなど、地球規模でもさまざまな取り組みが推進されている。

 しかし、人権保障を基本原理とする日本国憲法が半世紀に渉る歴史をもちながらも、依然として多くの課題が残されている。例えば、我が国固有の人権問題である同和問題は、今日ある一定の成果を見たものの、完全な解決には至っていない。また、女性・障害者・高齢者・子ども・在日外国人に係わる問題等をはじめ、様々な人権問題が存在している。

 学校法人天理大学(以下、本法人という)においても、児童・生徒・学生の人権意識の現状を正しく把握する必要から、平成11(1999)年5月に人権教育調査を実施し、分析・考察を行った。その結果、人権問題に対する関心は大いに高まっていることが明らかになったが、他方では、多くの因子をもって分析したにもかかわらず、人権教育ひいては信条教育の実がその結果に現れてきていないということも判明した。これは、これまでの教育が単なる知識・情報の伝達にとどまっており、その知識・情報が我がこととして血肉化されていないということを表していると読み取ることができる。

 血肉化されていないということは、一れつきょうだいの教えが実践されていない姿である事をしっかり自覚し、そのこと自体が陽気ぐらし世界の実現を阻む重大な問題であることを正しく認識しなければならない。一れつきょうだいの教えを実践するためには、民族や国籍、生活文化や価値観の違いを否定して同質化を求めたり、あるいはその間に優劣や序列を作り出して排除することなく、違いをありのまま受け入れ、互いの個性を認め尊重しあう意識と態度が必要である。

 今後、差別意識の克服を図るにあたっては、一人ひとりが、差別の実態を科学的、実証的にとらえ、あらゆる力を結集しなければならない。そして、これまで、同和教育や啓発活動の実践によって培ってきた蓄積を核として、取り組みの経緯・成果を正しく踏まえ、新たな手法も採り入れ、本法人内の人権教育を、発展的に再構築すべきだと考える。

 以上の観点から、本法人は、建学の精神にたって、すべての教職員及び幼児・児童・生徒・学生が個人として尊重される環境を維持し、信条教育を基底に据えた人権教育を、積極的に推進していくために、その基本方針を次のとおり定める。

1.本法人は、陽気ぐらし世界の建設に向けた行動力を身につけた幼児・児童・生徒・学生の育成を目指して、信条教育を基底に据えた人権教育を推進する。

2.本法人内のすべての教職員は、人権教育の受け持つ使命を正しく認識し、全教職員の共通理解のもとに、幼児・児童・生徒・学生一人ひとりの思いを受けとめて、その実態を正しく把握するように努める。そして、各教育施設の実情に即した指導目標と実施計画をたて、日々の行動につながる、きめの細かい指導をとおして、一人ひとりの持つ可能性を最大限に伸ばすよう努力するとともに、教育諸条件の整備を図る。
 また、すべての幼児・児童・生徒・学生の、就学、就労の支援・奨励及び学力保障に積極的に取り組み、総合的な学習の機会なども十分活用して、人権教育本来の目的達成に努める。

3.以上の目的を達成するに当たっては、熱意ある教職員の育成と、その資質の向上のために各種研修会の開催など、啓発活動を積極的に展開して、人権教育学習の充実・振興を図る。なお、国内に、人権問題や人権教育・啓発の内容・手法等に関し多様な意見が存在していることにも十分配慮し、人権問題等に関して、自由な意見交換を行うことができる環境づくりに努める。

本法人人権教育推進事務室、各教育施設は、常に有機的な連携をはかりながら、さらに天理教啓発委員会や地域の関係機関ならびに諸団体との連携を密にして、総合的にこれを推進する。

*平成6(1994)年12月の国連総会において決議され、各国において人権という普遍的文化が構築されることをめざし、あらゆる学習の場における人権教育の推進、教材の開発、マス・メディアの役割と能力の強化、世界人権宣言の世界的普及などを目的に掲げている。そして各国政府に国内行動計画を定めることをもとめている。

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